長引く咳について
お子さんの咳が長く続くと、ご家族は「大きな病気ではないか」とご心配されることと思います。実際、咳が2週間以上続くことは珍しくなく、原因はさまざまです。ここでは代表的な原因と、その考え方について説明します。
- 病気ではない(生理的)咳
風邪の後には、気道が一時的に敏感になり、2〜3週間程度咳だけが残ることがあります。
空気の乾燥、埃やたばこの煙などでも咳が誘発されます。元気があり、発熱や呼吸困難がなければ自然に治まっていくことが多く、内服薬等も不要な場合が多いです。
- 感染症による咳
かぜ(ウイルス感染):小児は免疫が未熟なため、咳が長引きやすく、2週間程度続くこともあります。特に咳が長引きやすい代表的なウイルスに、RSウイルス・ヒトメタニューモウイルス・ライノウイルス等があります。
百日咳:ワクチン未接種や免疫が落ちている場合にかかりやすく、「連続した強い咳」や「咳の後の嘔吐」が特徴です。
マイコプラズマ感染症:乾いた咳が数週間続くことがあります。
副鼻腔炎:粘稠な鼻汁が鼻の奥の副鼻腔という腔にたまっている状態で、その鼻汁が喉に流れる(後鼻漏)ため、夜間や朝方に咳が強くなります。
→ 感染症が疑われる場合は、必要に応じて検査(迅速検査・血液検査等)を行い、適切な治療を検討します。
- アレルギー等による咳
咳喘息:ゼーゼー音はなく「咳だけ」が続きます。夜間や早朝に悪化するのが特徴です。気道過敏性の高さが原因と考えます。
気管支喘息:夜間・運動時に咳が出やすく、呼吸時にゼーゼー音を伴うことがあります。気道の慢性的な炎症と気道の過敏性が原因と考えます。
アレルギー性鼻炎:鼻づまりや後鼻漏で慢性的に咳が出ることがあります。
→ 必要に応じて内服薬や吸入薬で治療します。
★『喘息』を心配されるご家族が多いと思いますが、血液検査や一度の受診だけで診断できるものではなく、主に症状の経過で診断することになるため、まずアレルギー血液検査を実施するという必要はありません(ダニや花粉にアレルギーがあるから喘息になるわけではありません)。寝起きのみの咳程度だけではなく、生活に支障のあるような咳(睡眠や運動が妨げられるような咳)がひと月以上持続したり、明らかな喘息発作があったりした場合に検討べきものですので、過度な心配はされず気軽にご相談ください。ただし、アレルギー性鼻炎に対する舌下免疫療法実施のためには血液検査は必須となります。
- その他の原因
逆流性食道炎:胃酸が逆流して咳を引き起こすことがあります。
気道異物:小さなおもちゃや食べ物が気管に入り込んだ場合、咳が続きます。
慢性疾患:まれに免疫や肺の病気が背景にあることもあります。
・お子さんの長引く咳は、自然に治まることが多い一方で、治療が必要な病気が隠れている場合もあります。 ご家族だけで判断するのは難しいため、気になる咳が続くときは気軽にご相談ください。実際、経過観察のみでよい場合も多いですが、必要に応じて検査や治療を行い、お子さんとご家族が安心して過ごせるようサポートいたします。
・また、治療によって症状が改善したように見えても、治療が効いたのか、自然に良くなったのかを見極めることも大切です。不必要な治療を漫然と続けないように注意が必要です。特に感染症以外の咳(咳喘息・アレルギーなど)では、症状の経過や治療の効果を確認しながら、複数回の診察を通して総合的に判断していくことになります。